絵画のような版画づくり―第6回美浜美術作家展
今年も美浜美術作家展の季節がやってきました!
というわけでこの夏の作品制作がスタートしました。
まずはお片付けからスタートです。一冬、腐食ブースを放ったらかしにしていました。冬は腐食が進みづらいので、エッチングに全然取りかかれなかったんです…
溜めに澑めた腐食液は去年の夏に産業廃棄物として処分したので、新たなポリタンクに貯蔵します。沈殿したサビもウエスで拭い取ってきれいにします。
キレイにしたついでに、一回り小さいバットに切り替えることにしました。大きいバットは同時に複数版を腐食できて便利なのですが、
・そのような場面自体がない
・液体を入れると重たく安定しないので、入れ替えのときに揺れて危ない
・液体が広がって浅くなる(もしかすると版面のサビ残留の原因か?)
ということを踏まえて、バットを一新しました。
その下に敷いているのは農業用のビニールシート0.1mm厚。床にこぼしたことはないですが、念の為にね。両面テープで固定しています。
右上が腐食液、左上が重曹中和。
今までは風呂場で醤油中和をしていましたが、排水口にサビが流れていくのが良くないので、回収できるように専用のバット(左下)を用意しました。合計3つのバットを使っています。
左上と左下は水溶性ですが、サビを含んでいるので下水には一切流しません。バケツに貯めて、夏いっぱい使って乾燥させて捨ててます。
新作「再誕」はずっと温めてきた画題なんですが、あれこれやっているうちに腐食まで相当時間がかかってしまいました。なんとか刷りまでこぎつけたんですが「パンチが足りない」の直感により、腐食が第2ステージに進出しました。
私は計画通りかっちり作り上げるタイプだったんですが、ここ数年「絵画のように版画を作りたい」と思うようになりました。あれこれ足したり引いたり、全体の調子を整えたりできたらもっと自由とか多様性とか生まれるのではないかと。
彫ったところはグランドでカバーして、余白(背景)にはグランドの筆跡を作りました。風がうねって吹いているような、そういう効果を狙っています。
暑いので腐食がよく進み、助かりました。
でも今年もやはりサビの残留には手こずりました。去年よりはマシかと思ったんですが…
ここ数年で得られた知見を書いておきます。
・面で大きく剥がれる箇所はサビの残留が発生しない。
・うすくグランドを塗った箇所・リグロインでグランドを拭い取った箇所・筆跡のようにグランドを塗った場所が細かく切り替わる箇所でサビの残留が発生する。
・腐食液の深さとの関係は未解明。
・重曹中和・醤油中和ともに浸け時間との関係は未解明。ただし、中和時に版面をこすってサビを落としておくのが手間がかからず一番近道。
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